福井県高浜町の西端に位置する日引地区。内浦湾の穏やかな海と、背後に迫る山々に抱かれた、半農半漁の集落です。

青葉山から見た内浦地域全景

海と山に抱かれた日引

日引地区は、複雑に入り組んだ内浦湾に面した集落です。目の前の海は波が静かで、フグの養殖が盛んに行われています。

背後には山が迫り、その急な斜面を利用して築かれたのが「日引の棚田」です。「日本の棚田百選」にも選ばれたこの棚田は、海へと続く階段のような美しい景観を作り出し、日引を象徴する風景となっています。

棚田での稲作と保全

日引の棚田は、その美しさの反面、維持管理には多大な労力を要します。急峻な斜面に作られた小さな田んぼには、大型の農業機械を入れることが難しく、田植えや稲刈りの多くを人の手や小型機械で行わなければなりません。

棚田の米作り(一年)

美しい景観は、季節ごとの細やかな手仕事によって守られています。一般的な稲作の工程も、狭い棚田では一苦労ですが、手間をかける分だけ愛着と美味しいお米が育ちます。

01
田起こし(たおこし)

春の初め、冬の間に固まった土を掘り起こし、空気を含ませて乾かします。微生物の活動を促し、稲が育ちやすい土台を作ります。

02
代掻き(しろかき)

田んぼに水を張り、土を細かく砕いてドロドロにかき混ぜます。表面を平らにすることで、苗を均一に植えられるようにし、雑草の発生も抑えます。

03
田植え(たうえ)

丁寧に育てた苗を、水田に植え付けます。棚田の形状に合わせて、手植えや小型の田植え機を使い分けながら進めます。

04
日々の管理(見・草刈り)

夏の盛りに欠かせないのが、毎日の水路の見回りと、畦畔(あぜ)の草刈りです。特に棚田は畦の面積が広いため、景観を守る草刈りは大変な重労働となります。

05
落水・中干し

稲の分けつが進んだ頃に一度水を抜きます。土にひびが入るまで乾かすことで、根に酸素を送り、倒れにくい丈夫な稲に育てます。

06
刈り取り(かりとり)

秋、稲穂が黄金色に実り、頭を垂れる頃に行います。収穫の喜びを感じる瞬間ですが、狭い畦を行き来する運搬作業などは重労働でもあります。

内浦の恵み

この地域(内浦地区)は、難波江、小黒飯、神野、神野浦、音海、上瀬、日引、宮尾、下、鎌倉、山中の11の区域から成り、内浦湾を囲むように集落が点在しています。

漁業だけでなく農業も営まれており、青葉山の麓に位置する鎌倉や山中地区では、冬の雪解け水を引いた稲作が行われ、美味しいお米の産地としても知られています。

また近年では、内浦湾の温暖な気候を生かした「内浦レモン」も地域の特産品として育まれています。潮風を受けて育ったレモンは香りが高く、新たな地域の恵みとして注目されています。

レモンや特産品